和三盆糖 ~職人が作り出す伝統砂糖~

2023.04.10 知識情報

和三盆糖 ~職人が作り出す伝統砂糖~

和三盆糖砂糖の種類


和菓子などに使われる高級な砂糖として有名な和三盆糖。四国の限られた地で職人によって作られる砂糖です。現在でもほぼ手仕事で作られ、日本伝統の味を守り続けています。 どんな砂糖なのでしょう?グラニュ糖や黒糖と何が違うのでしょう?


「和三盆糖」の原料は?

まず、「グラニュ糖」や「上白糖」はいろいろな国のサトウキビや北海道のテンサイを原料とし、「黒糖」は主に国内のサトウキビから作られています。

一方、「和三盆糖」は四国の徳島県や香川県などの限られた場所で栽培される「竹糖」と呼ばれる種類のサトウキビを原料としています。

沖縄県や、タイなどの海外のサトウキビに比べ、竹糖は名前のイメージどおり細いのが特徴です。そのため、一本のサトウキビから絞れる汁の量も少なく、その面からも大量生産に向きません。



作り方は?

先に「グラニュ糖」と「黒糖」の作り方を原料がサトウキビの場合で簡単に説明します

サトウキビをしぼった汁をろ過し、加熱しながら濃縮し、その液の中に砂糖の結晶を作ります。それを遠心分離機で結晶と液(蜜と呼びます)に分け結晶を取り出します。


その結晶を消費地の近くの精製糖工場に運び、再度溶かし、さらに不純物を取り除くために数種のろ過を行った後、加熱して液の中に純度の高い結晶を作ります。
そして、今度も遠心分離機で結晶と蜜を分けて、取り出した結晶が「グラニュ糖」になります。

(詳しくは過去のコラム 「お砂糖の作り方」 を見てくださいね)


「黒糖」はサトウキビをしぼった汁をろ過して、煮つめた後、そのまま冷却し固めてできあがります。




じゃあ、「和三盆糖」の作り方は?

和三盆糖作りは大まかに4つの工程に分けられます。

① 和三盆糖の原料となる竹糖を11月から12月ごろに刈り入れ、しぼります。このしぼり汁を加熱しながらアクをとり、一旦、その汁をろ過して不純物を取り除いた後、再度、十分濃縮されるまで煮詰めます。
それを冷やすことで液の中に砂糖の結晶ができ「白下糖」と呼ばれる、固体の結晶と液体の蜜が混じった飴色の混合物になります。

② その白下糖を外側が麻布、内側が木綿布を重ねた布を敷き詰めた木箱に入れます。それを上からテコの原理を使って石の重りで加重する「押し船」と呼ばれる機具で加圧することで液体の蜜を押し出します。

③ 蜜を抜いた白下糖を木箱から取り出し、少量の水を加えて手でこねます。これは「研ぎ」と呼ばれる作業で職人がひたすらこねていきます。この「研ぎ」により砂糖の粒子が細かくなり、更に蜜も抜けやすくなります。


和三盆糖の作り方.jpg


②と③の工程はセットで三回から五回ほど繰り返されます。「押し船」で蜜を押し出し「研ぎ」でこねることを繰り返すことで和三盆糖はどんどん澄んだ色になっていきます。


また、この作業を三回繰り返す様子が、和三盆糖の由来ではないかとも言われています。


④ 最後にふるいにかけて、陰干しすることで和三盆糖の完成です。




「和三盆糖」の美味しさは職人の手仕事から

サトウキビのしぼり汁を煮詰めるだけだと「黒糖」になり、しぼり汁のろ過をしっかり行い、煮詰めた液から結晶と蜜を完全に分けて純度の高い結晶だけを取り出すと「グラニュ糖」になる。

「和三盆糖」はそのどちらにも分類できない、ごく少量の蜜分を残すことで黒糖のコクをかすかに残しつつ、上品な風味も持ち、グラニュ糖のすっきりとした甘みも持つ砂糖です。

和三盆糖は江戸時代にできたといわれますが、当時の職人たちそれぞれが、白く上品に、そして美味しく感じられるよう試行錯誤の上、作り出した砂糖だと思われます。

実際、現在の和三盆糖も地域や職人によって蜜の含有量に差が生まれるため、製糖所によって風味に違いがあります。



和菓子には和三盆糖!その理由


和三盆糖は滑らかなくちどけで上品な甘さが特徴です。


そのため、砂糖の味を楽しむことに重きをおいた干菓子である「打ち物」作りに用いられます。もちろん高級な羊羹や最中の餡など様々な和菓子にも使われています。


四国の限られた場所で作られ、また、非常に手間がかかることから大量生産が出来ない和三盆糖。


和菓子を作る上で、豊かな日本伝統の味を生み出すのに欠かせない大切な素材の一つとして愛され続けているのです。


是非、機会がありましたら和三盆糖の貴重な味わいを体験してみてはいかがでしょうか。