砂糖の再結晶を活かしたお菓子作り

2023.05.01 知識情報

砂糖の再結晶を活かしたお菓子作り

ウイスキーボンボンエクレアフォンダン砂糖


砂糖は加熱する温度によってさまざまな状態に変化するユニークな性質を持っています。
今回は砂糖の再結晶という性質を活かしたお菓子についてご紹介いたします。


砂糖の再結晶を活かして作る「フォンダン」とは?


私たちが日々使っている砂糖は、サトウキビやテンサイからしぼった汁をろ過し、純度を高めた糖液から作られるショ糖の結晶です。

そんな砂糖を水で溶かして加熱していくと、最初、サラサラして透明な状態から徐々に色づき190℃ぐらいで濃く色づいたカラメルに変化していきますが、その途中の107℃から115℃あたり、透明なまま細かい泡が立っている状態で加熱を止めます。そしてこれをボウルなどに入れ急速に冷まし、かき混ぜると、溶けていたショ糖の再結晶が起こりツヤのある真っ白なクリーム状になります。この状態がフォンダンと呼ばれています。

フォンダンは細かい結晶と砂糖液のシロップがほどよく混ざった状態です。そのため粘土のように造形の自由度が高く、型などを使って繊細な砂糖細工を作ることが出来ます。

また、シロップを加えてケーキやクッキーをコーティングすると、なめらかな口当たりのツヤのある美しい装飾を施すことが出来ます。

私たちの生活になじみ深いエクレアは、フランス語で雷を意味するエクレールを語源にしていると言われていますが、雷光のような艶のあるコーティングを施すために、チョコレートにフォンダンを混ぜ込んだものが仕上げに使われています。



様々なスイーツに活かされる砂糖の再結晶


フォンダンの他にも、水に溶かした砂糖を煮詰めてから再結晶化させることで作られるスイーツにウイスキーボンボンがあります。

砂糖の再結晶を生かしたお菓子作り_挿入画像1_ウイスキーボンボン.jpg


飴のウイスキーボンボンはキャンディのような見た目をしていますが、表面だけが薄い飴状になっていて、口に含むと中のシロップがあふれ出すというお菓子です。

これは飴の中にウイスキーのシロップを注いで作られているわけでなく、型に注いだウイスキーシロップの表面だけを再結晶させることで作られています。

ウイスキーボンボンは砂糖水を加熱した後にウイスキーを加え40度まで冷ました後に、コーンスターチで作った型に流し込むことで作られます。

高い濃度で溶けている砂糖は一定の刺激を受けると再結晶する性質があります。
この性質を使って、コーンスターチという異なる物質に触れることが刺激となり、その接している表面にだけ再結晶が起きます。そのため内側の砂糖は結晶化されずにシロップの状態が保たれています。
このようにして不思議なスイーツが生み出されているのです。


今回は砂糖の再結晶を活かしたお菓子作りについてお伝えさせていただきました。

加工のために何か特別な添加物を加えるのではなく、温度や刺激で変化する砂糖の性質を使って作られるお菓子たち。ただ甘いだけじゃない砂糖の奥深さを意識しながら色々なスイーツを味わってみてはいかがでしょうか。


~~~参考文献~~~
・「砂糖の知識」砂糖を科学する会
・「科学でわかるお菓子の「なぜ?」」 監修: 辻製菓専門学校 共著: 中山弘典 木村万紀子



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