乳糖果糖オリゴ糖がどんなものかをご紹介するシリーズの2回目。今回は乳糖果糖オリゴ糖の「難消化性」についてです。
そもそもヒトは食べた物をどうやって栄養にするのでしょうか? 食品を栄養にする過程の「消化」が分かると乳糖果糖オリゴ糖の「難消化性」も分かりますので、先に消化についてご説明します。少し長いですが、よろしければお付き合いください。
消化とは、食べた物を全身の細胞が栄養として使えるように、体内に「吸収できるかたち」にすることです。
たとえばパンを食べると、まず口の中で咀嚼(そしゃく)され唾液に含まれる、消化酵素の唾液アミラーゼによりパンの主成分、デンプン(※1)は一部分解されて、ブドウ糖分子が2個から数個つながったものになります。
※1 デンプンはブドウ糖分子が数千個つながった分子構造をしています。
その後、胃で胃酸や蠕動運動により全体がゲル状になり、十二指腸で膵(すい)アミラーゼにより分解が進み、小腸で消化酵素のマルターゼにより、一つひとつのブドウ糖分子にまで分解されて吸収されます。
つまり、食べたものは小腸の壁などから吸収できる物質にまで分子レベルで小さく分解されてはじめて吸収され、栄養になります。
これらの酵素(※2)や胃酸、蠕動運動などにより食べ物が分解される過程全般のことを消化といいます。
※2 酵素はヒトで約5,000種類もっているといわれるほどさまざまな種類があります。それぞれの種類の酵素が特定の物質に対して特定の作用をおよぼします。詳しくは下のリンクから過去の記事「酵素って何?」を参考にしてくださいね。
パンに含まれるタンパク質や脂質も、それぞれに対応する消化酵素によりアミノ酸や脂肪酸などに分解されて、吸収されます。
上で見たように食物を吸収できるように分解するには対応する酵素が必要です。乳糖果糖オリゴ糖が「難消化性」なのは、この乳糖果糖オリゴ糖を消化する酵素をヒトが持っていないからなのです。
乳糖果糖オリゴ糖は乳糖と果糖がつながった構造をしています。ヒトは、乳糖(※3)だけならガラクトースとブドウ糖に分解して、果糖だけならそのまま、それぞれ吸収できますが、乳糖と果糖がつながっていると、そのつながりを分解する酵素を持っていないために分解できず、吸収できないのです。
※3 大人では乳糖を分解する酵素のラクターゼの分泌が少ない人も多く、その場合、乳糖不耐症の症状が現れます。詳しくは下のリンクから以前のコラム「乳糖ってどんなもの?」をご参考に。
もし大腸にビフィズス菌などがいなければ、乳糖果糖オリゴ糖はそのまま排泄されてしまいます。
1.大腸に届いてビフィズス菌によって食べられる
口から入った乳糖果糖オリゴ糖は唾液でも胃酸でもその他の消化酵素でもほとんど分解されずに大腸に届きます。そして、そこに棲むさまざまな菌の内、主にビフィズス菌に好んで食べられます。ビフィズス菌は対応する酵素を持っていて、分解して栄養にできるのです。
ビフィズス菌は乳糖果糖オリゴ糖を食べて酢酸やプロピオン酸などの「短鎖脂肪酸」を出しながら育ち、仲間を増やします。
この短鎖脂肪酸が腸内菌叢(ちょうないきんそう)を改善し、便通の改善やミネラルの吸収、アレルギー症状の緩和などヒトの健康にいい影響をおよぼします。
2.低カロリー
乳糖果糖オリゴ糖はほとんど消化吸収されないため身体の栄養になりません。つまり、乳糖果糖オリゴ糖自体のカロリーはゼロです。
ただし、大腸内でビフィズス菌が乳糖果糖オリゴ糖を食べて、同時に出す短鎖脂肪酸が大腸で吸収されてヒトのエネルギーになるため、その分で2kcal/gが乳糖果糖オリゴ糖を食べたときのカロリーとして計算されます。
今回は「乳糖果糖オリゴ糖ってどんなもの?」シリーズの2回目、「難消化性」についてご説明いたしました。
次回は乳糖果糖オリゴ糖でほんとうにビフィズス菌が増えるのか?腸内菌叢が改善したヒト試験をまじえてご紹介いたします。お楽しみに。
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