
乳糖果糖オリゴ糖がどんなものかをご紹介するシリーズの4回目。今回は大腸内でビフィズス菌が増えることによる影響の一つ、排便回数の増加について都内の女子大学生126人を対象に行った、ヒト試験をご紹介いたします。
(前回は1日1gの乳糖果糖オリゴ糖を1週間摂ることで、ビフィズス菌の占有率が17.8%から38.7%に増加するなど、乳糖果糖オリゴ糖と大腸内のビフィズス菌の関係をヒト試験でご紹介しました。下のリンクバナーからご確認いただけます)
被験者の選定方法などヒト試験の内容と結果の詳細を記載します。 その後に試験結果のまとめを記載しましたのでお急ぎの方は下へお願いします。
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【試験詳細】
「ラクトスクロース(乳糖果糖オリゴ糖)摂取が女子学生の便通に及ぼす影響」
調査項目:排便回数/週、排便日数/週、便性状(色、形状、量、におい)、排便感、健康状態、試験終了後の意識調査
被験者:東京都内の大学に通う健常な女子学生208名にアンケートを実施、1週間の排便回数が6回以下、および自覚症状として便秘傾向にあると回答された126名。
試験期間:非摂取1週間、その後、摂取2週間の全3週間。
摂取:摂取時間は指定せず1日のうち任意の時間に規定量の乳糖果糖オリゴ糖を摂取。
摂取規定量: 被験者を、1日当たり乳糖果糖オリゴ糖の摂取量2g、4g、6gの3群にわけて試験
結果:
・排便回数/週(排便した回数)
非摂取期間の排便回数をもとに、5~6回/週の人たちと、1~4回/週の人たちの2つのクラスに分けて分析。
〈乳糖果糖オリゴ糖が排便回数に及ぼす影響〉
| クラス (試験前の排便回数/週) |
摂取量/日 [人数] |
摂取前1週間 | 摂取1週間目(1~7日目) | 摂取2週間目(8~14日目) |
|---|---|---|---|---|
| 5~6 回/週 | 2g [14人] | 5.4±0.5 | 5.3±1.7 | 5.2±1.9 |
| 4g [12人] | 5.5±0.5 | 5.7±2.5 | 5.7±2.5 | |
| 6g [14人] | 5.4±0.5 | 5.7±2.3 | 6.0±3.0 | |
| 全体 [40人] | 5.5±0.5 | 5.6±2.1 | 5.6±2.5 | |
| 1~4 回/週 | 2g [27人] | 3.0±0.8 | 3.1±1.1 | 3.7±1.3 |
| 4g [31人] | 3.2±0.8 | 3.8±1.5 | 4.0±1.6 | |
| 6g [28人] | 3.1±0.8 | 3.9±1.3 | 4.3±1.8 | |
| 全体 [86人] | 3.1±0.8 | 3.6±1.3 | 4.0±1.6 |
試験の結果、1~4回/週のクラスでは摂取1週目(摂取1~7日目)から回数の増加が見られ、摂取2週目(摂取8~14日目)ではさらに増加しました。5~6回/週のクラスでは目立った増加傾向は見られませんでした。
・排便日数/週(排便した日数)
排便回数のときと同様に、5~6日/週の人たちと1~4日/週の人たちの2つのクラスに分けて分析。
〈乳糖果糖オリゴ糖が排便日数に及ぼす影響〉
| クラス (試験前の排便日数/週) |
摂取量/日 [人数] |
摂取前1週間 | 摂取1週間目(1~7日目) | 摂取2週間目(8~14日目) |
|---|---|---|---|---|
| 5~6 日/週 | 2g [12人] | 5.3±0.5 | 5.2±1.5 | 5.1±1.5 |
| 4g [12人] | 5.3±0.5 | 5.2±1.9 | 5.1±1.9 | |
| 6g [8人] | 5.5±0.5 | 5.9±1.0 | 5.3±1.8 | |
| 全体 [32人] | 5.4±0.5 | 5.3±1.5 | 5.1±1.7 | |
| 1~4 日/週 | 2g [29人] | 2.9±0.8 | 3.1±1.0 | 3.6±1.2 |
| 4g [31人] | 3.1±0.9 | 3.5±1.3 | 3.6±1.3 | |
| 6g [34人] | 3.1±0.8 | 3.6±1.3 | 3.9±1.5 | |
| 全体 [94人] | 3.1±0.8 | 3.4±1.2 | 3.7±1.3 |
試験の結果、1~4日/週のクラスでは摂取1週目から増加傾向が見られ、2週目でさらに増加しました。5~6回/週のクラスでは増加傾向は見られませんでした。
・便性状及び排便感
それぞれの項目の状態を色見本やイラストをつけて数字にて選択回答してもらい、それを集計。
〈乳糖果糖オリゴ糖が排便状況に及ぼす影響〉
| 項目 | 摂取前1週間 | 摂取1週間目(1~7日目) | 摂取2週間目(8~14日目) | |
|---|---|---|---|---|
| 便の色 | 1:黄色 ~ 6:黒褐色 | 3.9±1.1 | 3.7±0.9 | 3.6±0.9 |
| 便の形状 | 1:コロコロ状 ~ 6:水状 | 2.4±0.8 | 2.6±0.9 | 2.7±0.9 |
| 便の量 | 1:とても多い ~ 5:とても少ない | 3.1±0.7 | 3.0±0.6 | 2.9±0.7 |
| 便のにおい | 1:とてもくさい ~ 5:全く気にならない | 2.8±0.8 | 2.8±0.6 | 2.7±0.8 |
| 排便時の爽快感 | 1:さっぱりしない ~ 3:さっぱりした | 1.8±0.5 | 1.8±0.5 | 1.8±0.6 |
| 便の硬度 | 1:とても柔らかい ~ 6:とても硬い | 3.1±0.8 | 2.8±0.8 | 2.8±0.8 |
・健康状態(胃腸症状)
「お腹がはる」「グルグル鳴る」「おならが出る」などの症状がでた被験者がいました。いずれの被験者も一過性のもので継続した症状ではありませんでした。
・摂取後の意識変化
(乳糖果糖オリゴ糖を摂取後の排便に関する意識のアンケート調査結果です)
【便の色の変化】
・薄くなった 11%
・やや薄くなった 60%
・変化なし 28%
・やや濃くなった 1%

【便の量の変化】
・増加した 2%
・やや増加した 42%
・変化なし 49%
・やや減少した 4%
・減少した 3%

【便の硬さの変化】
・柔らかくなった 7%
・やや柔らかくなった 49%
・変化なし 30%
・やや硬くなった 10%
・硬くなった 4%

【爽快感の変化】
・爽快である 25%
・変化なし 65%
・爽快ではない 10%

【排便回数の変化】
・増加した 56%
・変化なし 39%
・減少した 5%

【下剤使用回数の変化】
・減少した 67%
・変化なし 28%
・増加した 5%

(飯野久和ら 医学と薬学、33(4):855-862, 1995.)
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乳糖果糖オリゴ糖を摂ると、消化吸収されず大腸に届き、そこに棲むビフィズス菌が食べて仲間を増やします。そして増えたビフィズス菌の出す短鎖脂肪酸が腸内菌叢(ちょうないきんそう)を改善し、ヒトの健康にいい影響をおよぼします。
今回ご紹介した126名でのヒト試験では、排便回数が週に4回以下の人の便通回数の増加効果が顕著に出ていました。
ただし、下剤のように飲めばすぐに多くの人に効果があるようなものではなく、摂取前の排便回数が週に平均で3.1±0.8回の人たちが摂取2週目で4.0±1.6回と緩やかな増加でした。
ビフィズス菌が腸内で徐々に増えて、その結果、悪玉菌が減り、蠕動運動が活発になり、大腸の調子が徐々に整っていくメカニズムをこの試験結果は表しています。
また、摂取後の意識調査で
便秘傾向にあると言われて、このヒト試験に参加していただいた方々の期待に乳糖果糖オリゴ糖は一定程度、応えられるものだと考えられます。

今回は、「乳糖果糖オリゴ糖ってどんなもの?」シリーズの4回目、排便回数の増加について女子大学生を対象に行ったヒト試験をご紹介いたしました。
高齢者や妊婦さんへの排便に関するヒト試験も行われていますので、次回以降、順次ご紹介いたします。またミネラルの吸収促進やアレルギー症状の緩和などのヒト試験も順次ご紹介していきます。
次回も見てくださいね。
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