鮮やかな赤紫色の野菜「ビーツ」。赤カブのような姿ですが、砂糖の原料になる「テンサイ」と同じ、ヒユ科アカザ亜目フダンソウ属の野菜です。
今回は、日本ではまだどんな野菜なのかあまり知られていない、ビーツについてひも解きます。
ビーツの生産地と、その見た目
「テンサイってどんな植物?」のコラムでご紹介したように、テンサイやビーツのルーツである「ビート」の歴史は古く、赤い根のものも紀元前から食べられていたようです。
中世にはヨーロッパでそのさまざまな料理法の記録が残っているほど普及していました。
現在ビーツは主にオランダ、オーストラリア、ニュージーランドなどで生産され、ヨーロッパやアメリカでは日常的に食べられています。
日本では缶詰や水煮パックで流通することが多かったのですが、近年は国内でも栽培が広まり、北海道や長野県などが生産地となって旬の6~7月と11~12月を中心に生のビーツも出回るようになりました。
一般的に流通しているビーツはテンサイよりひと回り小さいものが中心で、重さは小さいものなら200~300g、大きいものだと900gほどにもなります。
皮だけでなく中も同じ赤紫色をしていて、輪切りにすると年輪のような模様があるのが特徴。赤紫色以外にも、黄色や白色の品種や、白い地に赤紫の渦巻き模様が見られる品種もあります。
ビーツの味と料理法
ビーツそのものの味というと、テンサイと同様にショ糖が含まれているので甘味があります。
生のビーツは、皮をむいてスライスしたものをサラダに加えたり、酢漬けにしたりして食べます。
ただしビーツには「ジオスミン(ゲオスミン)」という土のにおいのする成分が含まれているため、生の場合は土臭さを感じることもあるかもしれません。
この分子は酸によって分解されるため、酢やレモンなどの調味料と合わせることで土臭さが抑えられます。
また、加熱すると甘みが増すため、レンジやオーブンでの加熱や、ゆでて食べることも一般的です。このとき、皮ごと加熱し、その後に皮をむくと、ビーツの美しい赤紫色が保てます。
ビーツは収穫後長く貯蔵できるため、とくに寒冷地で重宝され、サラダから煮込み料理までさまざまな調理法で食べられてきました。
もっとも有名なビーツ料理といえば、ロシアやウクライナの伝統料理で、ビーツのほかにたまねぎなどの野菜や肉を煮込んだ「ボルシチ」ではないでしょうか。世界三大スープのひとつと言われる料理です。
日本で栽培されるようになり生のビーツが手に入りやすくなった昨今では、その料理の幅も広がり、ポテトサラダや大根の漬物などの色付けに使われることも。
鮮やかな色合いで食卓を華やかにしてくれる野菜として、ビーツはこれからますます注目を浴びそうです。
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