クッキーにはバターなどの油脂が含まれます。食品中の油脂が酸化することをご存知ですか。風味も見た目も悪くしてしまう油脂の酸化とそれを抑える砂糖のはたらきをご紹介いたします。
サラダ油などの油脂は空気中の酸素や高温、光などにより油脂の分子に酸素分子が結合して酸化がおこり、油っぽい臭いが強くなったり、色が濃くなったりするなど品質が低下し、風味も悪くなります。
この酸化は油脂の中では比較的酸化しにくい飽和脂肪酸を多く含むバターでも起こります。特に空気に触れることで酸化が進むため、使いかけのバターを冷蔵庫内で保存するときも包装されていた銀紙でぴったり包んで、乾燥を防ぎながら空気に触れにくくすることが推奨されています。
そして、この油脂の酸化はクッキーなどに加工された後も起こり、食品の味を劣化させてしまうのです。
クッキーで言えば、油脂の酸化が一番進むのは、空気中の酸素と長時間接触する場合です。
クッキーの中でバターなどの油分は極小の粒となって小麦粉や砂糖などの粒と混じっています。このとき生地の中に水分があることで、油分が直接空気に触れることを減らし、酸化しにくくなります。
しかし、クッキーは焼くことで多くの水分が蒸発します。このとき砂糖の持つ、水分と結びつきやすい性質が威力を発揮します。
砂糖があることでバターの水分が結合水(※)となって砂糖と結びつき生地に残ります。
※ 結合水につきましては過去の記事「なぜジャムは長もちする?砂糖の防腐性」で解説しています。よろしければ下のリンクからみてくださいね。
このことでクッキーに含まれる油脂が空気中の酸素と触れる面を減らし、酸化を遅らせるのです。
酸化は油脂に限らず、色素や香りなどの成分、またアミノ酸などのタンパク質でも起こり、食品の味、香りを悪くする代表的な原因の一つです。
そのため市販されている食品は酸化しないように、さまざまな工夫がされています。
ビタミンEなどの酸化を防止する「食品添加物」を混ぜたり、包装の時に酸素を含む空気の代わりに「窒素ガス」で袋内を満たしたり、袋内の酸素をすすんで吸着する「脱酸素剤の小袋」を入れたり、酸素が透過せず、光も通らない「フィルムで個別包装」したり、また、それらを組み合わせることで、酸化から食品を守っています。
そのような酸化を遅らせ、食品の美味しさを保つ方法の一つとして、砂糖も力を発揮しているのでした。
今回は食品中の油脂の酸化を抑える砂糖のはたらきをご紹介しました。
ご家庭でお菓子を作る時は、ぜひ味の面からだけでなく、美味しさを保つためにも砂糖を使ってくださいね。
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