砂糖には、甘さのほかに高い親水性やその他の性質によって食品をおいしくする効果がさまざまにあります。それら砂糖のはたらきを味や香り、食感など美味しさの要素ごとに前編、中編、後編の3回にわたり紹介いたします。
中編の今回は「食感」へのはたらきです。ぷるぷるにしたり、しっとりトロトロにしたり、砂糖自体がパリパリや、ふわふわになったりもします。
甘いだけじゃない砂糖の「食感」へのはたらきをご紹介いたします。
砂糖の甘さ以外の一番の特性は「保水性」かもしれません。
砂糖は水によくなじみやすく、水によく溶けて、その状態を保ちます。コップ1杯(200mL)の水に砂糖が約400gも溶けます(20℃のとき)。
その特性を生かして、砂糖を入れると水分を保持してなめらかな食感の食べ物を作ることができます。水ようかんやゼリーなど、砂糖が水分をかかえることで、なめらかな食感になっている食品が多くあります。
詳しくはこちらの記事(「なめらかな食感に役立つ 砂糖の保水性」 「砂糖が水にたくさん溶けるのはなぜ?」)をご参考に。
果物をぷるぷるとしたジャムにするのも砂糖の保水性のはたらきです。
ジャムを作る時、まず果物は加熱によって細胞に存在するペクチン同士のつながりが切れて、形が崩れます。
このペクチンは周りの水分が減るとまた密な網目状につながりますが、砂糖が加わることで果物から出た水分を砂糖が引き付けるため、水分を大きく減らさなくてもペクチンがゆるくつながっていきます。
そのようにして水分の多いぷるぷるとしたジャムができるのです。
詳しくはこちらの記事(「ジャムにとろみがつく理由」)をご参考に。
プリンは卵のタンパク質が加熱により固まってできますが、その時、砂糖が入ることで柔らかい仕上がりになります。これはタンパク質が固まる時に、タンパク質分子同士がギュッと固まるその分子の間に水分をかかえた砂糖(ショ糖)の分子が入り込んで、間隔を拡げるからです。
他の条件が一緒なら砂糖が多いほど柔らかいプリンになります。すき焼きのお肉の柔らかさにも同じ原理がはたらいています。
詳しくはこちらの記事(「プリンはかため?やわらかめ? タンパク質の「熱凝固性」を左右する砂糖」)をご参考に。
パンは焼く前にパン生地を酵母(イースト)で発酵させて膨らませます。この時の発酵は酵母がブドウ糖などを食べて炭酸ガスとアルコールを出す作用のことです。
砂糖(ショ糖)はブドウ糖と果糖に分解されて酵母に食べられて、酵母は炭酸ガスとアルコールを出します。この炭酸ガスによってパン生地の内部に細かい泡が無数にできて、ふっくら膨らんでいくのです。
砂糖はパンを膨らませる酵母のごはんになっています。
詳しくはこちらの記事(「発酵を促進する砂糖」)をご参考に。
プリンと似た材料でベースのクリームを作り、上面にまぶした砂糖をバーナーで加熱したクレームブリュレを召し上がったことはありますか。
砂糖を高温で加熱すると褐色物質の「カラメル」ができます。キャラメリゼは調理用語でカラメルを作ることをいいますが、クレームブリュレの上面は、高温で砂糖を溶かしカラメル成分ができて褐色になった後、自然に冷えてキャンディ状に固まってできています。
クレームブリュレの美味しさは、トロトロの甘いクリームとパリパリの少し苦いカラメルになった砂糖とのコントラストではないでしょうか。
カラメルについて詳しくはこちらの記事(「クッキーやパンのおいしさの秘密 カラメル化とメイラード反応」 「温度で変わる砂糖」)をご参考に。
溶けた砂糖をそのまま冷ますのではなく、細く糸状に吹き出して急速に冷まし固めて作られるのが綿あめです。
材料は砂糖だけですが、溶けた後の固め方で食感の全く違う別の食べものに変化します。
綿あめは結晶の砂糖を高温で溶かし糸状に吹き飛ばして、空中で固まると同時に、からめとって作られます。この時の砂糖の状態を物理用語ではアモルファスといい、固形なのに分子がそろっていない状態でやわらかさがあります。
それで雲のような見た目、そのままのふわふわ食感になります。
詳しくはこちらの記事(「綿あめのふわふわのひみつ」)をご参考に。
今回は砂糖によってぷるぷるジャムができたり、プリンの柔らかさが決まったり、砂糖自体もふわふわやパリパリと状態が変わるなど、料理の「食感」への砂糖のはたらきをまとめました。
次回は食品にツヤを出すなど「見た目」や「保存性を高める」はたらきをまとめてご紹介します。
次回もみてくださいね。
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